krjn 31days
2023年12月17 日(日)開催「from far side/near side DR2023」で発行予定の新刊サンプルです。2ページ1話(約500字)のデア時空のカルジナお話書下ろし31話の豆本(判型A8)です。サンプルは2話分になります。
1
カルナは美形だ。その美々しさたるや「絶世の」を冠しても遜色がない。彼を凌駕するのは蘭陵王くらいではなかろうか?
「あのカルナさんの隣はボクには無理。楊貴妃さんたちレベルが必須。じゃなきゃ、美への冒涜……」
コンビニ通路をランウェイにする男と、背景に良く馴染むモブ女では画素から違うものである。
「はぁ? お前以外の誰が行くというのだ。わし様のカルナは美しい顔をしておるがな、三大美女に比肩するほどではないぞ。さすがの奴も背景になる。わし様ならば別だがな!」
「うえぇ、自分ならってどういう自信――って、あのカルナさんが背景って、審美眼どうなってんスか!」
ジナコは抗議の声を上げた。返ってきたのは意地の悪い笑みだった。
「わし様はカルナを醜いとは思わん。だがお前ほどは美しいとは感じぬぞ? お前のそれは惚れた欲目であろう。あとわし様の審美眼に間違いはない! お前はわし様のカルナの引き立て役にもってこいだ!」
「その評価は初耳なんスけど」
表に出てきたカルナはカップを二つ持っていた。あれは自分の分がない。溜息を吐いたジナコは、こちらを見る顔の眩しさに、引き立て役の意味をほんの少し理解した。
2
誤解が生じていた。ガネーシャがカルナに弁当を渡したのは、持たぬ男を憐れんでに違いなかった。カルナが彼女に話したのは、それが嬉しい出来事であったからだ。
「嬉しくなかった?」
「嬉しい。だがオレは事実を蔑ろにしてはならないと考えている」
「堅苦しぃ~。ボクのこれ、カルナさんが可哀想とかそういうのじゃないっスよ」
「……そうなのか?」
「カルナさん、今日もシミュレーターでしょ。ボクのでも交換したら、楽しいかなって思ったんだけど」
尻すぼみになる声に、カルナは目を瞬いた。最近、シミュレーターに想う者が拵えた弁当を携える者が増えた。カルナは何も持って来ていないので、自然と施される立場になる。彼らの至宝とも言うべきものを分け与えられる。その幸運をカルナは彼女に話していた。
「……楽しいと、思う」
「なんで自信なさげ」
「わからないんだ。だが楽しいと、その言葉だけに収まる気はしない」
「ふふ、そわそわしてるっスね」
くすぐったげに笑う相手にカルナは頷いた。そういう幸福にカルナに縁遠かったのだ。今は初陣のように、一刻も早く、その時が来て欲しい。
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